夏の日、僕は君の運命を変える
1時間ほど考えてみたけど、頭が痛すぎて上手く働かない。
電話だけでもしてみることを決め、ここちゃんに電話をかけた。
『もしもし?』
いつも通り聞こえる、ここちゃんの声。
これがもうすぐ失われるなんて。
『水樹くん、久しぶり。
この間は切ることになっちゃってごめんね』
「ううん、平気。気にしないで。
それより、大丈夫?」
『うん。
水樹くん、時間ある?』
「今日はバイト休みなんだ。
どうぞ、好きなだけ話してください」
『じゃお言葉に甘えて』
ここちゃんは話してくれた。
片想いしていた相手を、吹っ切ることにしたことを。
彼の恋人になった親友と、本当の親友になれたことを。
名前は伏せていたけど、きっと片想いをしていた相手が宍戸先輩で、親友が筧さんだ。
「良かったね。親友ちゃんとますます仲良くなれて」
『うん。
これも奥村のお蔭だよ!』
「……奥村?」
出てきた自分の名前に驚く。
だけど冷静さを装った。
『うん。
バスケ部員で、親友と話し合うよう言ってくれた人』
「へぇ、良いことするね、その人。男?」
自分だとわかっていても、やっぱり他人事に思えてしまう。
かつての僕は、そんなことをしたんだ。
『男だよ。
あとわたし…奥村に、告白されちゃったの』
「告白!?返事は」
『していないよ。
まだ気持ちの整理とか出来ていなくって』
奥村水樹と僕は、皆が言うよう別人だけど。
どうやら好きになる人は一緒みたいだ。