夏の日、僕は君の運命を変える
第19章 31年9月25日
「……」
目が覚めた時、視界に広がったのは真っ白な天井と壁。
1度どこかで見たことがあるような景色に、俺は瞬きをひとつした。
「……気が付いたか、水樹」
「…父さん?」
傍に居た父さんに声をかけると、父さんは目を見開いた。
「思い出したんだな、全部」
「え……?」
「以前のお前は俺をお父さんと呼んでいた。
随分他人行儀な言い方だった。
義理の父親を呼ぶようなな」
「……今、いつ?」
「9月25日だ」
あれから1ヶ月、俺はずっとベッドの上で寝ていたらしい。
何度俺は意識不明になれば良いんだ。
「医者を呼んでくる。
大人しくしていなさい」
「わかった……」
目を閉じ、思い出す。
今度は忘れていなかった。
父さんが仕事人間だったことも、母さんが死んだことも、大学生になったことも。
8月25日のことも、全部忘れていないで覚えていた。
「今日は1日病院で様子を見てみましょう。
何、すぐに退院出来ますよ」
医者が来て軽い検査を行い、どこも異常が見つからなかった。
院内や庭を歩いても良いということだったので、俺は外に出てみることにした。