夏の日、僕は君の運命を変える
直接会うのは何だか恥ずかしかったので、看護師さんに渡すのを頼んだ。
そして病院から離れ、夕焼け空を見上げながら歩いていると。
「春沢っ!!」
「……」
以前見た時よりも大人になった彼が、息を切らして立っていた。
ジッと見つめると、わたしの元へ来てふわりと笑った。
「やっと会えた」
「…うん。やっと会えたね」
「ずっと、すっごく会いたかった」
「わたしも。
あ、スマホ受け取ったんだ?」
「ああ。
本当、このスマホには感謝しないとな」
「わたしの命の恩人だもんね」
このスマートフォンがいなかったら、わたしはもしかしたら、最悪の事態になっていた。
スマートフォンくんと、目の前にいる水樹くんには感謝しかない。
「そうだ」
わたしはペンダントを外し、水樹くんの手のひらに乗せた。
「覚えてる?」
「うん。やっと文字が見られるね」
裏返した水樹くんは、にっこり笑った。
そしてあの機械越しでも伝わってきた柔らかい声音で、わたしに言った。
「心。
改めて、俺と付き合ってください」
「はい、喜んで」
そっと繋がれる手のひら。
そこから伝わる、本当のぬくもり。
機械越しじゃない、何も間にない、わたしたち。