夏の日、僕は君の運命を変える
「ここで使われるのは擬人法。
本来は人じゃない物とかを、人に表す方法だよ」
「ふむ……」
公民館に着いたわたしたちは、空いているスペースを見つけて勉強を始める。
涼しいしいるのは将棋を打つおじさんおばさんたちだけで、静かで良い。
30分ほど教え、一旦休憩を取ることにした。
「いやー、春沢の教え方上手いな」
「そう?先生と同じ教え方をしているだけだよ」
「先生とは違うって!
春沢が教える方がよりわかりやすいし、頭に入ってくる!」
「そう言ってもらえると教え甲斐があるよ、ありがとう」
正直、確かに先生の教え方もはいっているけど、半分以上は水樹くんが教えてくれる方法だ。
最近水樹くんには勉強を教えてもらっているので、国語の確認テストの成績も良い。
基本は水樹くんのアルバイトの時間までだけど、水樹くんも毎日アルバイトではないので、わたしの両親が帰るまでの間教えてもらうこともある。
「そういえば春沢さ」
「うん?」
「あのスマホ、どうなったんだ?」
「あのスマホ?」
「春沢が持っているスマホとは別の、黒いスマホ。
落としたの拾ったって言う…」
「奥村も知っていたんだ?」
「いや、筧と宍戸先輩が話しているの聞いた」
「あのふたり、気になっているみたいだからね」
持ち主に無事戻ったと言って暫(しばら)く経ったけど、たまに「呪いとかない?」と聞いてくるふたり。
かっちゃんは夜水樹くんとの電話が終わった後「何もないよな」と心配してかけてきた日もあった。
最近では収まってきているけど、聞かれる度に罪悪感が生まれて押し潰されてしまいそうだ。
「というか、希和とかっちゃん仲良いの?」
「え?
ああ…結構仲良いよなあのふたり」
「そうなんだ…」
「…付き合っているとかそういうのは聞いていないから」
「ありがと」
奥村はわたしがかっちゃん好きなこと知っているからね…。
奥村はクールかもしれないし明るいのかもしれないし、どちらもかもしれないしわからないけど。
皆が口を揃えて言う優しいは、本当みたいだ。
確かに頼まれて断っているの見たことなくて、いつだって笑顔で皆の悩みを聞いてあげたり助けてあげたりしている。
「でも……」
「え?」
「部員の中では噂になっているよ。
筧と宍戸先輩が付き合っているんじゃないかって。
ふたりで出掛けている姿見た奴も何人かいるし」
「……」
「まぁ筧はマネージャーだし、宍戸先輩はキャプテンだから。
色々話すことや揃えたいものとかあるんだろ。
出掛けたっていう次の日はタオルだのなんだのって色々貰うし」
「……」
「というか、筧と春沢は親友だろ。
それで筧と宍戸先輩付き合うとか、あり得ないから」
「…だよ、ね」
「変な話してごめん。
最近の部活での話題だから、いずれ聞くだろうって」
「うん、ありがとう」
「勉強、するか」
「うん」
気まずい空気にはなってしまったけど、わたしは平然を装い奥村に勉強を教えた。