夏の日、僕は君の運命を変える
第5章 28年7月15日
奥村と勉強をしてから数日。
テスト週間は始まり、その間わたしたちはずっと一緒に勉強をしていた。
先生たちは真っ直ぐ帰って勉強、とか言っているけど無視して公民館で勉強をするのが日課になった。
わたしが国語を教え、奥村が国語以外の教科をわたしに教える。
殆(ほとん)どわたしが奥村に頼っている状態だけど、奥村は教えてくれる代わりに、と快く引き受けてくれている。
最近では成績が上がっているとミニテストを受ける度感じるので、奥村の器の大きさと優しさに頭が上がらない。
そして5日前迎えたテスト当日。
初日の最初から数学と国語で、特に苦手なのと得意なのが重なって良いのか悪いのかわからなかったけど。
苦手だった分野が数学のテスト範囲だったけど、奥村に教えてもらった甲斐があったのかスラスラ解けた。
国語は奥村に教えることで自分も勉強になったし、水樹くんから教えてもらった所がテストに出た時は思わずガッツポーズをしてしまったほど。
監督の先生に見られたけど、嬉しかったんだからしょうがない。
放課後の電話で水樹くんに話したら、ツボだったみたいでずっと笑っていた。
『テスト中にガッツポーズするの、見たことないわー』
「しょうがないじゃない。嬉しかったんだから」
『まぁ僕が教えたことが役立ったみたいで、教えた側も嬉しいね。
良い点数取れる自信は、何点満点?』
「100点に決まっているでしょー!」
テスト中電話しない方が良いんじゃない?と水樹くんに言われたけど、わたしは変わらず電話をしてくれるよう頼んだ。
電話をしなくては繋がれないし、ただでさえちょっと気分が下がるテストなのだ。
水樹くんの明るさをわたしも欲しい。
「明日は科学と英語なの。
どっちも苦手だけど…頑張らないと」
『頑張れ心ちゃん!
僕も心ちゃん見習ってバイト頑張らないと。
でも無理するなよ!』
「水樹くんも無理しないでね」
『うんっ!じゃバイトだから、またね』
「またね水樹くん」
真っ暗になった画面にわたしの笑顔が映った所で、机に置く。
わたしのと合わせ白黒並んだスマートフォンは、見慣れた光景になった。
「よーし!頑張るぞー!」