夏の日、僕は君の運命を変える
担任から個別に配られたテストに赤点はなくて。
不安だった理数系の教科も英語も、赤点じゃなくてほっとする。
赤点を取らなかったのは、奥村のお蔭かな。
「奥村」
「ん」
「ありがとう。色々教えてくれて。赤点なかったよ」
「お礼を言うのは俺の方だ。
国語、太田に勝つこと出来たんだ」
「そうなの?良かったね、おめでとう」
「春沢のお蔭だ。ありがとうな」
にこっと笑う奥村。
二重の瞳が細くなり、結構かっこいいと不覚にも思った。
かっちゃんよりイケメンじゃないけど、奥村も結構かっこいいんだ。
「にしても筧、凄いな」
「そうだよね、わたしも驚いちゃった」
「結構努力したんだなー」
希和の周りには多くの女子が集まり、希和を凄いと褒め称えている。
希和の成績があまり良くなかったことは有名だったから、いきなり3教科もクラストップで、やっぱり皆も驚いたらしい。
「…でも、変だな」
「え?」
「変だと思わねぇ?いきなりトップなんて」
「…希和頑張っていたから。努力が報われただけだよ」
「……」
疑うような目で、奥村は希和の後姿を見つめている。
「まさか……」
「え?」
「…いや、何でもねぇ」
奥村は立ち上がると、いつも一緒にお昼を食べている太田たちの元に行った。
奥村…一体希和の何を疑っているのだろう。
何か知っているのかな、わたしが知らない希和を。