夏の日、僕は君の運命を変える
「そういえば心は、宍戸先輩とどこか遊びに行かないの?」
「~!?はい?」
危うく玉子焼きを軽く噛んだだけで飲み込みそうになり、急いで噛み飲み込んだ。
希和は何を言い出すんだ…。
「あんまり聞いたことないなって。心が宍戸先輩と遊びに行くって話」
「色々誘ってはみているんだけど、用事があるって断られちゃってて」
「そうなの?可愛い幼馴染からの誘いなのに?」
「可愛くないよ、わたし。
かっちゃん真面目だから、勉強とかあるみたい。
自主練とかも積極的にやっているとも言っていたし」
「まぁバスケ部結構試合夏に多いからね…仕方ないのかな」
「頑張っているのに無理に休ませるのも気が引けちゃって」
「…優しいんだね、心は」
「消極的なだけ。
本当はぐいぐい誘うのが良いのかもしれないんだから」
「時にはぐいぐい行くことも必要だと思うけど、それし過ぎると自己中になっちゃうからね。
心はまぁ…ちょっと控えめな所はあるよね。
あたしからしてみれば、もっとぐいぐい行っても良いんじゃないかなって」
「だって、断られたら嫌じゃない?」
「そうだけど……」
「わたしは今のままで良いかなって。
カレカノの関係になるのも、たまに迷ってるし」
「好きなら好きで良いんじゃないの?」
「…好きなら好き、ねぇ……」
「たまには積極的になってみなさいな」
「…わたしは希和みたいに積極的じゃないから」
「心…ネガティブすぎ」
苦笑いを浮かべる希和。
わたしは「ご馳走様」と手を合わせてお弁当を鞄に仕舞った。
「そういえば次の時間発表される学年順位トップファイブ。
国語の欄に心いるんだろうな~」
「国語だけはトップを狙っているからね。
そういう希和こそどこかに入っていたりして」
「入っていたら嬉しいなぁ~」
ぱくりとクリームパンに齧りつく希和。
わたしは笑いながら、奥村に聞いた話を思い出していた。
大丈夫。
希和とかっちゃんはそんな関係じゃない。
もしふたりの仲が良かったら、「どこか遊びに行かないの」とか「ぐいぐい行くことも必要」とか応援なんてしてくれるはずない。
大丈夫、希和とかっちゃんはそんな関係じゃない。