夏の日、僕は君の運命を変える
第6章 28年7月23日
朝起きたわたしは、いつも通り少し髪を残して三つ編みを結わき、黒を基調とした大人っぽい私服に着替えた。
今日、7月23日は水樹くんとのお出掛けの日。
お出掛けと言っても、電話で話しながら街を歩くだけ。
聞いてみると3年経っても変わらない風景が広がっているそうなので、時間は違く手も同じ場所を歩くことが出来る。
「よし。
スマホくん、今日もよろしくね」
自分のと水樹くんのスマートフォンを持ち、わたしは家を出た。
明日は休みだけど、今日は仕事の両親。
今日は水樹くんのアルバイトが休みの日なので、夜まで話せるかなと考える。
待ち合わせは駅前で10時。
本当は待ち合わせなんてしなくても良いんじゃないかと思ったけど、「待ち合わせした方が楽しいでしょ」と言われた。
確かにその通りかなと納得したので、わたしは駅前で水樹くんからの電話が来ることを待った。
『~♪』
来た。
わたしは紺色のリュックサックのペットボトル入れの所に入れた黒いスマートフォンを取り耳に当てた。
『おはよっ。こっちは良い天気だけど、そっちはどう?』
「こっちも良い天気だよ。でも暑い…」
『もう少しで本格的な夏だもんね。
心ちゃんはもう夏休みに入ったのかな』
「まだだよ。水樹くんは?」
『僕はもう夏休みだったんだけど、バイト三昧で』
「前から気になっていたんだけど、どうしてそんなにバイトをするの?」
わたしが知る限り、週1で休みなだけで、あとは全部アルバイトをしている。
そんなにお金が必要なのだろうか。
『生きて行くためにはお金が必要だから』
「何それ。確かにその通りだけど」
『色々と必要なんだよねーお金。
僕の場合毎月本を買っているから、本代を稼いでいるようなものだね』
「そんなに買っているの?」
『読むのが早いみたいですぐに読み終わっちゃうんだ。
もう1回読み直しても結局は終わっちゃうし。
新しいのを求めているうちに、結構買っちゃうんだよねぇ』
「最近は何買ったの?」
『柏ユメのエピローグだよ』
「何それ!新作?聞いたことない題名…」
『3日前に出たばかりだよ。
そっちではまだ改装中のスーパーの本屋で買ったんだ。
バイト帰りに寄れるからね』
「良いなぁ本屋が近くにあって。
学校近くまで行かないとなくって…」
『じゃあ今日それ買いに行く?
それともどこか行きたい場所とかあったりする?』
「特にないけど…良いの?」
『面白いから是非文学少女の心ちゃんにも読んでほしいからね。
どこに行く?』
「駅近くにショッピングモールあるでしょ?」
『どこ駅?』
「釘沢(くぎさわ)駅」
『あぁあるね!
そういえばあそこに大きな本屋さんあるよね。
僕も1回だけ行ったことあるんだ』
「わたし本屋さんが出来てから行ったことないの。
その前は何度かショッピングモール行ったことあるんだけど。
そこ行ってみたいなって」
『よし、じゃそこに行こう。道順はどうする?』
「道順?」
『僕ら今日一緒に出掛けているんだよ。
同じ道順で同じような景色を見ながら行こうよ』
「じゃあ……」
本当は電車で行くのが1番楽だけど、電車内で電話は出来ないから。
暑いので歩きで行ける最短距離を調べて、それで行くことにした。
わたしは実質スマートフォン2台持ちなので、わたしが調べた。
『スマホ2台あるって凄いね』
「片方わたしのじゃないけどね」