夏の日、僕は君の運命を変える
色々話したり、色々な写真をカメラに収めている間に、人が段々多くなりショッピングモールに到着する。
わたしが高校に入学した1年前の春に完成したばかりで、毎日のように様々なお店でイベントを開いているから人が絶えない。
人混みがあまり得意ではないわたしは、開店した時に初めて希和と行き、それから片方の指で足りるぐらいしか来たことがない。
『こっち結構人多いけど、そっちはどう?』
「やっぱり休日だから人多いな…。本売っているかな」
『柏ユメは人気だからね。
早めに行こう。本屋の場所はわかる?』
「地図見ないと…」
『じゃあ僕案内するよ。
そんなに店舗入れ替えはないと思うから』
水樹くんに案内してもらい、ひとつやふたつ、店が変わっていたけど場所は変わっていなかったので、無事本屋に到着出来た。
本屋は予想以上に大きくて、どこにあるかわからない。
「水樹くん場所わかる?」
『Aのコーナーが小説売り場だから、まずそこ行ける?』
「うん」
『着いたら今ドラマ化とかしている原作本置き場があると思うんだけど』
「あったよ!」
『そこの右の棚から入って…下ぐらいに置いてあると思う』
「……あれ?」
今気が付く。
「水樹くん。
水樹くんの所で柏ユメの新作が出たんでしょ」
『そうだけど?……あっ!』
「わたしの所で出るわけないじゃない!」
『そうだった…。
3年前はまだ出ていないんだ…』
「どうりで柏ユメのブログをよくチェックしているわたしが知らないと思った…」
まさかここで気がつくとは。
柏ユメの新作が手に入ると思ってわくわくしちゃったよ。
『ごめん…今の今まで気付かなくて』
「ううん、わたしも気付かなかったからおあいこだよ」
『こうやって毎日のように電話していると、3年の差があること忘れるよ』
「でも、安心した」
『え?』
「まだ柏ユメ、小説書いているんだね。
この間引退するんじゃないかって言われていたから」
『まだまだ現役で書き続けているよ』
「3年後、柏ユメの新作が出るの、楽しみにしてる」
『楽しみにしていてよ。面白くてハマるから』
3年後、とか言うわたしを、周りの人がチラチラ見ながら通り過ぎて行く。
わたしは本屋を出て、ふっと吹き出した。
「わたし、3年後とか言っているから変な目で見られちゃったよ」
『偶然。僕もさっきから見られてる』
「でも本当、3年の時間差を忘れちゃうな」
『時間に誤差はあるけど、生活リズムとかは一緒だからね。
心ちゃんが僕と同じ31年を生きていると錯覚するよ』
「普通に電話出来ているものね」
でも、時々ふっと思うんだ。
いつまでわたしたちの繋がりは続くのだろうって。
ある日突然、何事もなかったかのように、それこそスマートフォンを落としたように簡単に途切れてしまったら。
その時わたしは、どうするのだろうか。