夏の日、僕は君の運命を変える
汗だくで、息を切らしながら着いた家は静かで。
簡単に手洗いうがいを済ませ、そのまま自室のベッドにダイブした。
布団に窒息しそうなほど顔を埋め、堪えていた涙を溢れさせた。
『初めまして、心ちゃん。宍戸勝志って言います』
『…ししど、かつし?』
『そう。勝志だから…かっちゃんって呼んでね』
『かっちゃん?』
『そうだよ。よろしくね、心ちゃん』
わたしがかっちゃんと出会ったのは、幼稚園生の頃。
ひとつ違いなのに大人っぽくて優しくて、素敵で。
引っ込み思案で友達を作るのが苦手だったわたしの、初めての友達だった。
その時は歩いて1分もしない場所に住んでいたから、よく遊びに行った。
両親はその頃から仕事に育児休暇から復帰し始めたばかりだから、家には誰もいなくて、かっちゃんのご両親もお兄さんもわたしを受け入れてくれていた。
かっちゃんのお兄さんはかっちゃんと7歳離れていて、高校生になったと同時に独り暮らしを始めている。
わたしは必然的に、年齢の近いかっちゃんと一緒にいるようになった。
同じ小学校で、同じ中学校。
引っ込み思案な性格は変わらなくて、よく男子にからかわれていた。
だけどその度に、物語に出るヒーローのように現れてわたしを守ってくれて。
惚れない方が可笑しい。
好きだったのに。
気持ち悪い、だなんて。
どうしてわたし、そんなことを言われてしまったんだろう。
好きだから近くにいたくて、好きだから応援したくて。
それがかっちゃんにとって気持ち悪いことだった?
…わからないよ。
希和を傷つけるなって言っていたけど。
希和は裏切り者じゃないの?
確かに気軽に言って良いような言葉じゃないけど、そうじゃないの?
わたしが違う?
わたしが全部全部、間違っているの?
「わからないよっ……。
誰が合っていて誰が間違っているかなんて、わからないよっ…」