夏の日、僕は君の運命を変える
第1章 28年5月2日
「…………」
わたしの前には、黒のスマートフォンがある。
わたしのスマートフォンは白だから、これはわたしのではない。
3年後の未来人こと春田水樹(はるた・みずき)のスマートフォンだ。
1週間前の夕方、わたしは春田水樹のスマートフォンを拾った。
電話をして、春田水樹は現在の28年から3年後の31年の遙華(はるか)市に住む18歳の大学生だということがわかった。
3年後に宅急便など送れないので、彼のスマートフォンはわたしの元にあるというわけだ。
「あれ?心(こころ)、新しいスマホ買ったの?」
「希和(きわ)、おはよう。これわたしのスマホじゃないよ」
「え?じゃあ誰の?」
「道端に落ちていたスマホ」
「そうなの?じゃ帰りに交番に届けないとね」
「うん」
届けられたら届けたいよ…そりゃ。
「そういえば英語の課題やった?」
「…課題?」
「まさか心、忘れていたとか言わないよね」
「…そのまさかです」
「だ、誰か英語の課題見せてーっ!」
私と同じ2年2組であり、私が1番仲の良い友達・希和。
正直課題どころじゃなかったけど、わたしは課題をやり始める。
英語の先生は厳しいことで有名だから…。
「俺やってきているけど?」
「えっ本当!?奥村(おくむら)貸してくれない?」
「どーぞ」
わたしの隣の席である奥村が希和にノートを貸す。
希和が写し出したのを見て、わたしも奥村に聞いてみた。
「わたしも借りて良い?」
「…好きにすれば」
「ありがとう!希和一緒に見せてー」
「どうぞ。ってあたしのじゃないんだけどね」
奥村は漫画に出てくるほどイケメンじゃないけど、クールで優しい。
成績が良くてバスケ部所属で運動神経も結構良くて、良いと言っている女子も多い。
1年生の頃は別のクラスだったけど、2年になり同じになってからはよく話すようになった。
というのも希和がバスケ部マネージャーをしているから、その縁で。