夏の日、僕は君の運命を変える
希和は話してくれた。
ずっとわたしに言えなかったことを。
「バスケ部マネージャーになろうと思ったのは、あたし中学の時バスケ部だったんだ。
でも試合に向けての練習のし過ぎで肩壊してドクターストップかかったんだ」
「え?そうだったの?」
「今は治ったんだけど、ブランクがあったから選手に戻ることは諦めて。
でもバスケは好きだったから、マネージャーになろうって。
マネージャーになってすぐだった、宍戸先輩のこと好きになったの」
「……」
「でもあたしはずっと心から宍戸先輩が好きだって聞いていて、奪うことは出来ないって。
でもマネージャーとして支えたくて、頑張って力になろうとした。
時々部員のために買い出し一緒に行っているの目撃されて、心に知られたらどうしようって焦ってた」
買い出し一緒に行っているのを部員たちが見ている、とは奥村から聞いていた。
その時はまだ付き合っていなかったんだ。
「前に部活帰りに宍戸先輩に話があるって、告白された」
「かっちゃんから告ったの?」
「そうだよ。
あたしは勿論心がいるから断ったんだけど、宍戸先輩諦めなくって。
好きにさせるって言われて、さすがに必死な姿見て可哀想になって、オッケーしちゃったんだ」
「……」
「心に言おうと思ったけど、関係がぎくしゃくするのが嫌で。
その時に言っておけば良かったって、今凄く後悔しているんだけど」
「希和…」
「この間も、今度試合があるからモチベーションを上げるために何か買いたいって言う宍戸先輩に、彼女じゃなくてマネージャーとして付き合うことにしたんだ。
そうしたらいきなりキスされて、手を繋がれて。
心が見ているってわかった時は、心臓が壊れるかと思った」
「…わたし、勝手に勘違いを…!」
「無理もないって。
でも、あたしだって最低なんだよ。
心が好きだって知っていたくせに、先輩にキスされた時、嬉しいって思ったんだから。
あたしは心に裏切り者って言われて良いことを思ったんだよ」
「そんなことない!」
わたしは机を軽く叩いて立ち上がった。
「わたしがかっちゃんの気持ちに気付いて、希和の気持ちに気付いていれば良かったんだ。
希和は裏切り者って言われる立場じゃないよ!」
「…ありがとう、心」
わたしは座って、希和に本音を伝えた。
「わたし、ずっと考えていたの。
かっちゃんと希和、どっちが大事なんだろうって」
「そりゃ勿論…」
「希和だよ」
「え?」
「かっちゃんのことは正直、今でも好きだよ。
だけどわたし、希和が離れた方がショックだって今日気付いたの。
わたしにとって希和は、大事な親友だよ」
「心っ…!」
「わたしも、これからもっと希和に本音を話す。
もう希和に隠し事はしないし嘘もつかない」
「うんっ…!あたしもそうする!」
ぎゅっとわたしたちは教室の片隅で抱き合う。
話し合えば、きっと大丈夫。
だってわたしは、ひとりじゃない。