夏の日、僕は君の運命を変える






わたしたちはそのまま帰ることにした。

だけど真っ直ぐ帰らず、ショッピングモールに行くことになった。

1階にある喫茶店に入り、お互いイチゴパフェを食べながら話をしていた。




「そういえば心、あの黒いスマホの持ち主と話しているんだっけ?」

「そうだよ」

「どんな人なの?興味ある」

「…信じてくれるの?3年後の人と話しているなんて」

「そりゃあ最初は信じられなかったけど、心の言うことだから。
決めたでしょ、あたしたちの間に隠し事も嘘もなしって」

「ありがとう、希和。
大学生で、基本アルバイトしている人だよ」

「…どこにでもいそうな人ね」

「わたしと同じ本の作者が好きで、その話とかで盛り上がっちゃったんだ。
この間のテストの時も、文学部だから教えてもらったりしたんだ」

「だから2位と差があったんだ!」

「そういえば希和、今回のテストの点数良かったけど、もしかして…」

「実は、宍戸先輩に勉強教えてもらったの。
あんなに良い点数が取れたのには驚きだったんだけどね」

「さすがかっちゃん!
わたしも頭良くなりたいなぁ~」



正直、まだ失恋の傷は癒えていないけど、大丈夫。

わたしはひとりじゃないし、大事な親友がいるから。



「名前は?何て言うの?」

「春田水樹くん。水樹くんっていつも呼んでいるんだ」

「…ミズキ?」



パフェを食べる手を止め、首を傾げる希和。



「え?もしかして、知り合い?」

「…どこかで聞いたことある名前だなぁって。
あーでも、どこでだっけ…?」

「肝心な所を…」

「でも、名字が確か春田じゃなかったから、気のせいかも。
漢字はどう書くの?」

「季節の春に田んぼの田に、水道の水にイツキって読む漢字で水樹」



自分のスマートフォンを取り出し、電話帳に登録されている春田水樹を見せる。



「かっこいい名前だね~」

「優しくて面白くて…綺麗な人なの」

「綺麗?」

「うん。
わたしと繋がっていたことを記録に残そうと写真を撮ったり、証を作ろうとしたり。
何て言うか…真っ直ぐで、純粋で綺麗な人なんだ」



ショッピングモールにこの間行く途中で撮影した写真を見せる。

希和は「この花可愛い。撮るの上手いね」と褒めてくれた。



「もしかして心、その春田さんが好きなの?」

「え?」

「春田さんのことを話す心の顔、宍戸先輩のことを話す心の顔に似ていたよ」

「…嘘」

「本当だって。
むしろ宍戸先輩のことを話す時よりも嬉しそう」

「き、気のせいじゃ…」

「い~や、恋愛マスターのあたしを舐めてもらっちゃあ困るね」

「恋愛マスター…?」

「あたしって結構恋愛相談受けるんだよ。
同い年、先輩後輩、はたまた先生への恋愛相談とかもね」

「結構幅広いのね」

「だからあたしの目に狂いはないよ!
心、絶対春田さんに恋してる!」

「確かに電話するの楽しいし、会いたいとは思うけど。
それって本当に恋なのかな…」



かっちゃんしか好きになったことないから、わからないな…。




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