夏の日、僕は君の運命を変える
「もしもし」
『あ、春沢。今良いか?』
「良いよ、どうしたの?」
『明後日、25日って暇か?』
「どうして?」
『春沢、柏ユメ好きだって言っていただろ』
「うん、好きだよ」
柏ユメ。
小説家である彼女について、あの人と盛り上がった日が懐かしい。
まだ発売日じゃない、向こうで売られていた新刊を手に入れるなんて無謀なことを実行したりしようともした。
『俺、母さんが出版社で働いているんだけど』
「え、意外。奥村本読まないでしょ」
『読まねぇよ。読むのは母さんだけ。
それで、柏ユメのサイン会が25日に行われるらしいんだ』
「そうなの?」
『そのチケット、母さんから2枚貰ったから、一緒に行かねぇ?』
「良いの?
奥村、柏ユメ興味ないでしょ?」
『春沢が喜んでくれるなら、良い』
照れているのか、少しぶっきらぼうな口調になる奥村。
柏ユメのサイン会は人気な上滅多に行われないので、行けるなんてレアだ。
「行きたい!どこでやるの?」
『土木沢駅の近くのビルの中だって』
「あそこ本屋なかったよね?」
『特設コーナーでやるんだって』
「そうなんだ。
じゃ、25日一緒に行こう」
『おう!』
わたしたちは待ち合わせの時間を決め、電話を切った。