夏の日、僕は君の運命を変える
お昼休み。
わたしは1週間音沙汰のない黒いスマートフォンを見つめていた。
このスマートフォンは変わっていて、こちらからは一切かけられない。
画面さえも明るくならない。
唯一明るくなるのは、向こうから電話がかかってきた時のみ。
…つくづく変なスマートフォンだ。
わたしと春田水樹は1週間前、お互いの名前と年齢、現在学生だと言う簡単な自己紹介を終えて電話を終えた。
というのも春田水樹にはあの後アルバイトの予定が入っていたらしく、時間だからと切られてしまったのが真相だろう。
状況がよく読み込めていないまま一方的に電話を切られて1週間経ったけど、音沙汰は全くない。
「お待たせー心、食べよ」
「うん」
購買にてお昼ご飯のパンを買って来た希和が戻ってくる。
わたしは毎朝お母さんが作ってくれるお弁当を開けて食べ始めた。
「そういえば思ったんだけど」
「うん?」
「心の拾ったっていうそのスマホ、見たことない機種だよね」
机の上汚さないよう気を付けながら置いてあった春田水樹のスマートフォンを見て、希和が呟く。
「希和、よく機種わかるね…」
「言わなかったっけ?あたしのお父さん、携帯電話会社で働いているの」
「それで……」
「電源とかつくの?あ、パスワードかかっているか」
「別に悪用しないからね?…電源はつかないみたい」
電源ボタンに手をかけ押してみるも、やっぱりつかない。
切れているわけじゃないんだろうけど…変なスマートフォンだ。
「まー交番に届けなさいね」
「うん」
頷いたものの交番に届ける気はない。
だって持ち主は平成31年に生きる、3年後の人なのだから。
未来人のスマートフォンを持って来られても、相手が困るだけ。
どうにかして春田水樹に会うまでは、このスマートフォンはわたしが持っておくしかないのだ。