夏の日、僕は君の運命を変える
第10章 31年8月25日
『──ガタンッ』
『おい大丈夫か!』
『しっかりしろ!!』
ガコンッ
僕はその場にスマートフォンを落とし、自分も膝から崩れ落ちた。
目からは自然に涙がこぼれ、自室の絨毯に染み込んで行った。
「おーい水樹、どうしたー?」
仕事が休みの父が部屋に入り、僕を見つけて傍にしゃがみ込んだ。
「どうした水樹!大丈夫か」
「…父さん……」
「もしかして、何か思い出したか」
「……お父さん、僕」
「何だ」
「……出掛けて来なくちゃ」
「え?お、おい水樹!」
僕は何も持たないで部屋を飛び出し、自宅を飛び出し、無我夢中で走り出した。
何も変わっていない、静かな住宅街を思い切り走り、目的の場所に辿り着いた。
「……ッ!」
今日もここは、多くの人で賑わっている。
人も車も、何も知らないで。
そう、何も知らないで賑わっている。
3年前の今日、何があったか知らないで。