夏の日、僕は君の運命を変える
放課後、バスケ部の練習があると言う希和と別れて帰路につく。
1時間ほど歩いた先に、わたしの家はある。
本当は自転車通学をしたいのだけど、自転車通学が禁止の高校なのだ。
何故そんな不便な高校を選んだのかは…希和が言っていた通り、かっちゃんを追って受験をしたから。
かっちゃんもわたしの家の近所に住んでいたのだけど、中学卒業と共に引っ越してしまって。
今は高校から15分ぐらい歩いた所に家がある。
さすがに実家暮らしのわたしが家まで追いかけることは出来ないから、結果ひとりで帰っている。
「……今日も、綺麗だ」
ふと空を見上げると、1週間前と同じ茜色の空が広がっていた。
同じよう立ち止まると、隣をあの日と同じスマートフォンを触りながら男性が歩いて行く。
まるで、あの日を繰り返しているように…
『~♪』
軽快な音楽が、鳴り響く。
わたしのスマートフォンから発せられる音じゃない。
黒いスマートフォンを鞄から取り出すと、見知らぬ番号からの電話だった。
「もしもし…」
『あ、心ちゃん?』
「春田さん…。今日は公衆電話じゃないんですね」
『いちいち駅まで行くの面倒で、バイト代で新しいの買ったんだ。
だから今まで連絡出来なくって』
「別に構いませんよ。アルバイト、お疲れ様です」
『ありがとう心ちゃん』
心ちゃん。
わたしをそう呼ぶのはかっちゃん以外にいたんだ。
『そういえばどう?そのスマホ使えた?』
「いえ、全く使えないです。画面も暗いままで」
『充電は?』
「どれぐらいかわかりませんけど…こうやって電話出来ているから切れてはいないと思います」
『本当、不思議なスマホだな。僕のなんだけど』
ふふっと春田さんの笑い声が聞こえる。
このスマートフォンは電源が入らない以外にも不思議なことが多くある。
春田さんは31年4月25日、スマートフォンを持って家を出て大学へ向かおうとしていた。
その時見たスマートフォンの充電残量は、10%。
大学に着いたら友達の充電器を借りようと考えていた春田さんだったが、いざ大学に着き借りようとしたところ、スマートフォンを落としたことに気付いたという。
そしてスマートフォンは、どんなテクニックを使ったのかわからないけど、3年前の28年4月25日に戻り、わたしの手元に現在あるというわけだ。