夏の日、僕は君の運命を変える
講義を全て終え、のんびりと帰宅して部屋のベッドに寝転がる。
アルバイトまで時間はある。
だいぶ時間は経っているのに、まだ自分の部屋だと思えない。
僕は、奥村水樹はどうやって過ごしていたんだろう。
何を思い、何を楽しみ、何に喜んでいたんだろう。
「…あ、そうだ」
僕は電話帳に父よりも先に登録した番号を呼び出す。
【不思議なスマホ】と言う名前で登録された番号は、時空を超えてしまった黒いスマートフォンの電話番号。
無機質な呼び出し音が続き、訝しむような声が聞こえてきた。
『もしもし…』
「あ、心ちゃん?」
『春田さん…。今日は公衆電話じゃないんですね』
「いちいち駅まで行くの面倒で、バイト代で新しいの買ったんだ。
だから今まで連絡出来なくって」
『別に構いませんよ。アルバイト、お疲れ様です』
「ありがとう心ちゃん」
最初は春沢さんと呼んでいたけど、僕の方が年上と言うことで下の名前呼びになった。
どことなく、心ちゃんと呼んであげると喜んでいるように聞こえる。
僕のスマートフォンの謎について話していると、心ちゃんに3年後の市内はどうなっているのか聞かれた。
僕と心ちゃんは時空が違うものの、似たような所に住んでいた。
3年前は改装中だったと言うスーパーが出来、中に入るファミリーレストランでアルバイトをしていることを伝えると、まだ見えぬ未来に胸を躍らせているように喜んでいた。