夏の日、僕は君の運命を変える






「現像して、出会えた時見せ合いっこしようね」

『うん!楽しみにしているね』

「そうだ。
心ちゃん自身の写真も撮ってよ」

『え!?』

「制服姿でも良いんだけど、今日の写真を僕は観たい。
お出掛けで、きっとお洒落をしている心ちゃんの写真をね」



少しも策が思いつかない僕らが出会う方法。

もしかしたら出会えた時、心ちゃんは高校を卒業しているかもしれないから。

見ておきたい、“今”確実に僕と繋がっている心ちゃんを。




『…水樹くんも撮ってよね『

「勿論(もちろん)。
今日のために新しい服をバイト代で買ったんだから」


デートですか?と太田に薦めてもらった服屋の店員さんに言われて、沸騰しそうなほど恥ずかしくなったのは良い思い出だ。



『え!?気合い入ってるね!』

「だって、お出掛けって言っているけど実際デートみたいなものだし」

『で、でででデート!?』

「あれ違った?僕はそのつもりだよ。
心ちゃんには片思いの相手がいるけど、付き合っていないんでしょ?」

『そうだけど…』

「1日限りで良いからデートさせて?」

『……特別ね』



今だけで良いから、僕に綺麗な世界を見せてほしい。

もしかしたら君は、僕と出会えた時誰かの大切な人になっているかもしれないから。

今だけで良い、僕と繋がって笑っていてほしい。

僕の身近な人になっていて。




「よし!じゃ行こうか!日が暮れちゃうよ!れっつごー!」

『み、水樹くんもしかして走ってる!?』

「走らないと置いて行くよー」

『ま、待てー!』



いない相手に向かって「置いて行くよ」と行ったり「待て」と言ったり、傍から見れば僕たちは変な人。

だけど、それで良い。

僕たちの出会いはそもそも、スマートフォンが時空を越えるという変な出来事だったのだから。

ひとりじゃない。

世界も空気も時間も違くても、僕たちはひとりじゃないよ。



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