夏の日、僕は君の運命を変える
行く場所がなくなってしまい、心ちゃんが僕に行きたい場所を聞く。
ショッピングモール内はお洒落なカフェや洋服屋、ゲームセンターなどが並んでいる。
洋服屋は相手が試着してもどんな服を着ているかわからないから却下だし、ゲームセンターはきっとうるさくて電話での会話に向かない。
カフェ?と考えていると、ふと今回のお出掛けの本来の目的を思い出した。
そうだ、今日は心ちゃんがトップを守れたお祝いだ。
「じゃ、このデートの本来の目的を達成しよう!」
『本来の目的?』
「心ちゃんがトップを守れたご褒美。
僕が買うって言ったの」
『それ、本当に買ってもらっちゃって良いの?』
「うん。
それに、約束にもなる」
『約束?』
「僕たちが絶対会おうっていう約束。
お金を返すためには、会わないといけないからね。
いわば、心ちゃんが欲しい物は僕たちの約束の証!」
『約束の証……』
「そう。
さ、心ちゃん欲しい物選んじゃって。
僕結構バイト頑張っているから、値段は気にしないで良いよ!」
実はちょっと不安だから、って本音は隠しておく。
時間は平等じゃないことを、ほぼ3年間意識不明だった僕は身に沁みて知っている。
簡単に誰かに奪われてしまうのだから、いつアッサリこの関係が終わってしまっても可笑しくない。
だから欲しいんだ、繋がっていたという確かな証が。
『わたしの今持っているお金の限度もあるから、値段は気にするよ』
「あ、そっか」
『じゃ、遠慮なく選ばせてもらうね』
「どうぞどうぞ~」
暫し沈黙があり考えていた心ちゃんは、身につけられるネックレスを選んだようだ。
心ちゃんに楽しんでもらえるよう、ショッピングモールの中に入っているお店を口コミで評判調べておいて良かった。
ただそのことを伝えると、女たらしと言われてしまった。
納得がいかないけど…。
だって、女の子に喜んでほしいと思うのは、男にとって当然の気持ちだろう?
心ちゃんがお店には言ったようで、沈黙が流れる。
僕は近くの空いたベンチに座り、沈黙が切れるのを待っていた。
その間、先ほど撮ったばかりの写真を眺めた。
出会ったらまず最初に心ちゃんの写真が欲しい。
とびきりの心ちゃんの笑顔を写真に収めたい。
同時に記憶にも焼きつけたい。
そうしたら以前誓ったけど、もう1度その場で誓うんだ。
もう二度と、記憶は失わないと。