青い花束
第二章
「う〜ん…暑い!!」
3年生になってから3ヶ月が過ぎ、季節は夏になった。
私達の高校は、毎年7月に体育祭を行う。
だから今日はその前日準備だ。
「だいたい…なんで7月に体育祭なんてやるの!?暑くて死んじゃう〜」
私は自分の教室の机にうなだれた。
「夏休みが明けたら、3年生に受験に集中してもらうためなんだって。おじいさまが言ってた。」
紗那は、体操服にゼッケンを縫い付けながらそう言った。
私達は裁縫係なのだ。
「そっか、紗那のおじいちゃんってこの学校の理事長だったね。」
紗那は手際よく針を服に通す。
そしてゼッケンを付け終わり、私の方を見た。
「あーちゃん、できた?」
いや、正確には〝私が手に持っている物〟を見た。
「あ、あはは…」
私はその質問に、苦笑いで答えた。
自分の手の中にある"それ"を見つめる。
ゼッケンはぐちゃぐちゃに縫い付けられ、白かった体操服は、
針を何度も指に刺してしまったせいで赤い斑点ができていた。
私、昔から裁縫はホントにできないんだよね…。
紗那が「裁縫係やる」って言うから私も立候補したけど…
いや、裁縫できないのは自覚してたんだよ?
ちょっとくらいなら役に立てるかなー?って思って…
それが、役に立つどころか足をひっぱってしかいない。
「ごめん、紗那…」
私は肩を落として謝る。
「大丈夫だよ。えっと、その体操服は私が洗濯しておくね?あーちゃんは絆創膏もらって来なよ。」
紗那も苦笑いでそう言ってくれたので、もう一度謝って保健室へ向かった。