青い花束
第一章
もぞもぞ…
え、うそ…これって…
高校三年生の春。
いつもの如く満員電車に揺られていると、
自分のお尻に違和感を覚えた。
今日から新学期と言うこの日。
私、山本碧(ヤマモト アオイ)は後ろのおじさんに絶賛痴漢され中です。
なんで!?どうして今日なの!
クラス替えやら受験やらで色々不安になるこの日に!
どうしていつもはされない痴漢なんか…!
目の前には幼なじみの野村圭太(ノムラ ケイタ)がいるが、あまりの出来事で声も出せない。
LINEなどで伝えようにも、スマホは鞄の中だし。
必死に圭太に目で訴えるがスマホをイジっているので見向きもしない。
圭太!お願いだからこっち見て…!
「け、けいた…」
震える声を絞り出す。
それでも圭太は顔を上げずに「んー?」とだけ言った。
なんで見てくれないの…!助けて…!
そう言いたいのに、声が思うように出ない。
もう次の駅まで我慢するしかない、そう覚悟した時。
「何やってんだ、アンタ!」
誰かが私のお尻を触っていたおじさんの腕を掴み上げた。
「次の駅で降りてもらおうか。」
その誰かがそう言うとおじさんは「あああ…」と震えた様な声を上げた。