青い花束
☆★☆
「はい、お茶。」
種目が終わって、私達は保健室に来ていた。
泣いている紗那を落ち着かせたかったんだ。
「…う…っグスッ…うう…」
しかし、紗那は落ち着くどころか、さっきよりも泣き始めてしまった。
私は保健室のベットに腰掛けて、背中を撫でてあげた。
「泣かなくてもいいんだよ?最下位じゃなかったし、皆も責めたりしないから。」
「…グスッ…グスグス…」
うーん…どうしたら元気出るかなあ…
「今から皆に謝りに行く?それで気が晴れるんだったら…」
私がそう言って立ち上がろうとすると、紗那は私の服を引っ張った。
紗那を見ると、フルフルと首を振っている。
「ちが…う…の…」
「違うって何が?」
紗那が掠れた声で訴えるので、もう一度座り直す。
「皆に…迷惑かけた事もそうなんだけど…本当は…そうじゃなくて…っ…グスグス」
「うん。」
「お題…が…っ」
「うん。好きな人がいないから困っちゃったんでしょ?大丈夫だよ。それも皆に言おう?」
「ち…がう…本当は…」
紗那は一生懸命首を横に振る。
「好きな人…いる…っの…」
「え?」
「私…唯斗…先生が…好きなの…っ…グスッ」
紗那が先生を、好き…?
ドクン
『さっき会った先生って…』
ドクン
『いいなあ…』
ドクン
さっきも、里奈が先生の事を好きだと言っていた。
その時は何も思わなかった。
少し胸が傷んだような、そんな気がしただけ。
でも、紗那が先生を好きだと言った。
それだけなのに、何故か鼓動が大きくなる。
「私…先生の所に…走って行きたかった…っでも…そんな事したら…先生に迷惑…かけ…ちゃうって…っ」
ドクン
「そう思ったら…っ…何か…辛くて…」
ドクン
紗那はまた泣き始めてしまった。
私はそれをなだめる事もできずに、ただただ背中を撫でる事しかできなかった。
校庭では、リレーのスタートを知らせる乾いた銃声が鳴り響いていた。