青い花束
誰もいなくなった校舎。
職員棟3階の社会科準備室。
「先輩、いいんですかあ?体育祭抜けて来ちゃって♪」
「ん。別に俺1人抜けたくらいじゃ、誰も気付かねーから。」
簡単に男に引っかかる女ってのは、本当に馬鹿だと思う。
「じゃあ私、キスしたいな〜」
「…おいで」
俺がそう言うと、女は「わあい」と言いながら抱きついてくる。
ああ、こいつも馬鹿な女の1人なんだろう。
少し関係をもったくらいで、自分の事が好きなんだと勘違いするような。
「ん…んん…」
女は俺を貪るようにキスをした。
「ふ…せんぱぁい、このまま…シちゃいます?」
上目遣いで見つめてくるが、全く可愛いとは思わない。
俺は女の肩を押して離れさせた。
「いや…今はそんな気分じゃないな。」
「ちぇー。」
どうして馬鹿な女は喋り方も馬鹿みたいなんだろうか。
その喋り方を聞くと、どうしてもイライラする。
「ねえ、どうして先輩は…あんなバカみたいなキャラ演じてるんですかあ?」
突然、質問をぶつけられた。
そんな事を聞いてきた女は初めてだったので「は?」と聞き返してしまう。
「昨日見ちゃったんですよ。先輩が教室で女の人と話してるトコロ♡」
昨日……着替えに行った時か。
「いつもはあんな話し方しないじゃないですかあ。」
「………」
「私知ってますよ。教室で話してた人が先輩の好きな人だって♡」
「…好きな人?」
「碧セ・ン・パ・イ。」
ガンッ
俺は、近くにあった机に勢いよく女を押し倒した。
「…そんな事に気が付いたの、アンタくらいだよ。」
女の手首を掴み、机に押し付ける。
すると女はクスクスと笑った。
「当たってるでしょ?私、勘だけはいいんです♡」
女は、獲物を狙う豹のような顔をしていた。
「どこで探ったのか知らねーけど、碧にちょっかいかけたら容赦しねえよ?」
「何もしませんよぉ。私、彼氏いますしぃ♡」
「ふーん…もっと馬鹿な女だと思ってた。」
「そこら辺の女と一緒にしないで下さい♡」
俺は女の手首を掴んだままキスをする。
そして、服の中に手を入れた。
女がまたクスクスと笑う。
「『気分じゃない』んじゃなかったんですかぁ?」
ああ、やっぱりこの喋り方はイライラする。
「…気が変わった。」
俺はまた、自分の嘘に溺れて行った。