青い花束
第三章


紗那が…先生の事を好き…


「…い…おい…」


ただそれだけの事なのに。


「…あ…あおい…」


どうして私は…


「あおい…碧!」


誰かに名前を呼ばれて、私はハッと我に返った。


慌てて隣を見るとバカそうな…いやいや、心配そうな顔をした圭太が立っていた。


そうだ、私紗那の荷物を取りにテントに来たんだった…。


「どうしたんだよ、ボーッとして。」


圭太は私の顔を覗き込んで来る。


どさくさに紛れて、ヤツの手が腰に回っていた。


「何でもないよ。それより、どこ行ってたの?皆探してたんだから。」


私はそう言いながら腰にある手をつねる。


「痛…っ!トイレだよ、トイレ!」


「あっそう。別に興味ない。」


より一層強くつねると、ようやく腰から手を離した。


「棒倒しに出るんでしょ?早く行きなよ。」


「おう!しっかり見てろよ、碧!」


「あー、はいはい。見てる見てる。」


なんてね。


本当はすぐに紗那の所行っちゃうんだけど。


私が「見てる」と言ったことがよっぽど嬉しかったのか、圭太はニコニコ笑顔で走り去って行った。


その隙に、急いで荷物を持って保健室へ向かう。


保健室の前まで来ると、中からボソボソと話し声が聞こえた。


私がいない間に藤子ちゃんが戻って来たのかな?


そう思って扉を開けた。


でも、中にいたのは藤子ちゃんではなく…



「先生…」 



先生と紗那が、2人で話している所だった。


紗那の顔からすっかり涙は引いていて。
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