青い花束
「あ、あーちゃん。お帰り!」
今まで、私も見たことがないような笑顔を浮かべていた。
「ただいま…?先生来てたんだ。」
私は驚いて笑顔が引きつってしまう。
なんで自然にできないの…?
私、先生の事なんて別に…
「ああ、松坂が泣きながら保健室行ったって聞いたから。」
そっか、先生は紗那の事を心配して…そう言いたいのに胸がズキズキと痛む。
「大事な生徒なんだから放っておけないだろ。」
あ、なんだ…〝生徒として〟心配したんだ。
私は、先生の一言一言に一喜一憂している自分がいる事に気が付いた。
これじゃあまるで、私…
「あーちゃん、どうしたの?」
さっきから黙っている私を不思議そうに見ている紗那。
そんな顔を見たら、さっきよりも胸がズキズキした。
「碧?顔色悪いぞ?」
先生も心配そうにこちらを見ている。
もちろん、〝生徒として〟。
私はズキズキと痛む心臓を抑え、パッと顔を上げた。
「ごめん、なんでもない!外が暑すぎて一瞬クラクラしただけ!」
ニコッと微笑むと、紗那は「大丈夫?」と聞いてくれた。
私は「大丈夫だよ!」とだけ答え、持って来た荷物を渡す。
「じゃあ、俺はそろそろ戻ろうかな。」
「え…っ」
先生が戻ってしまうと分かった途端、紗那はまた泣きそうな顔になった。
「せ、先生はここにいてあげてよ!私、自分の種目あるから戻らないといけないし!」
私が慌ててそう言うと、先生は「そう言うことなら。」と残ってくれる事になった。