青い花束

「あ、あーちゃん。お帰り!」


今まで、私も見たことがないような笑顔を浮かべていた。


「ただいま…?先生来てたんだ。」


私は驚いて笑顔が引きつってしまう。


なんで自然にできないの…?


私、先生の事なんて別に…


「ああ、松坂が泣きながら保健室行ったって聞いたから。」


そっか、先生は紗那の事を心配して…そう言いたいのに胸がズキズキと痛む。


「大事な生徒なんだから放っておけないだろ。」


あ、なんだ…〝生徒として〟心配したんだ。


私は、先生の一言一言に一喜一憂している自分がいる事に気が付いた。


これじゃあまるで、私…


「あーちゃん、どうしたの?」


さっきから黙っている私を不思議そうに見ている紗那。


そんな顔を見たら、さっきよりも胸がズキズキした。


「碧?顔色悪いぞ?」


先生も心配そうにこちらを見ている。


もちろん、〝生徒として〟。


私はズキズキと痛む心臓を抑え、パッと顔を上げた。


「ごめん、なんでもない!外が暑すぎて一瞬クラクラしただけ!」


ニコッと微笑むと、紗那は「大丈夫?」と聞いてくれた。


私は「大丈夫だよ!」とだけ答え、持って来た荷物を渡す。


「じゃあ、俺はそろそろ戻ろうかな。」


「え…っ」


先生が戻ってしまうと分かった途端、紗那はまた泣きそうな顔になった。


「せ、先生はここにいてあげてよ!私、自分の種目あるから戻らないといけないし!」


私が慌ててそう言うと、先生は「そう言うことなら。」と残ってくれる事になった。
< 25 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop