青い花束
紗那の目は少し潤んでいて、本当にショックだったみたいだ。
「あはは…プリン大好きだもんね?」
「笑いごとじゃないよ〜!」
私達はそんな事を話しながら教室へ向かった。
「そう言えば…先生とのドライブはどうだった?」
教室を掃除している中、紗那に問いかけた。
教室には私と紗那しかいない。
さっき、聞くのが怖いって言ったけど…どうしても気になるんだもん!
紗那は私のその質問に、動きをピタッと止めた。
「……」
ん?反応が…
やっぱり、どこか元気がないように見える。
「紗那〜?」
「…あーちゃん!」
また勢い良く抱きつかれる。
今日は抱きつきたい気分なのかな?
「昨日ね、ホントにやばかったの!距離感近いし!運転してる横顔とかすっごくかっこいいし!」
少し頬を赤く染めて、興奮したように話している。
そんな紗那を可愛いと思う反面、ズキンッと心が傷んだ。
自分で聞いたくせに傷つくとか…
「……早く掃除終わらせよ!あーちゃん。」
「え?」
「ん?なーに?」
「あ…何でもない。」
あれ?もう話終わり…?
先生と何話したとか、こんな事言ってたとか、
もっと色々聞かされると思ってたから、ちょっと拍子抜けだな…
ガラガラガラ…
「紗那いるー?」
ふいに教室の扉が開き、クラスメイトの女子が顔を出した。
紗那を探しに来たらしい。
「あ、いた!ちょっと来てもらっていい?」
「うん?行って来るね。」
「はーい」
さてと…
1人になった教室を、黙々と掃除する。
ふと窓の外に目をやると、男子生徒が水を掛け合って遊んでいた。
「小学生じゃないんだから…」
でも、よく見てみると、見覚えのある人が目に付いた。
「先生…?」
先生が、半ズボンにTシャツと言ったラフな格好で紛れて遊んでいたのだ。
その光景に、思わず笑ってしまう。
だって、子供みたいに無邪気に遊んでるんだもん。
「よし…掃除しよっ!」
しばらく先生を見た後に、もう一度掃除を再開する。
次は黒板かなあ。
黒板を見ると、体育祭でのラクガキがたくさん書かれていた。
『絶対勝つぞ!』なんて決意を語ったものから、自分の名前、
『優勝したら告白する!』なんてものまである。