青い花束

なんか、消しちゃうのもったいないなあ…


私だったら、何て書いただろう。


そう思い、おもむろにチョークを握る。


窓の外からは、さっきの男子達の笑い声が聞こえた。


もちろん、先生の声も。






「…『好き』」






キーンコーンカーンコーン


お昼休みのチャイムが鳴り、私は我に返った。


自分の手元を見て、また泣きそうになる。


私、こんなに泣き虫じゃなかったのになあ…


「っ…うう〜…グスッ」


私が思わず黒板に書いてしまった『好き』の文字。


黒板消しを手に取り、慌てて消すが、少しだけ跡が残っている。


その跡も消そうと、黒板消しを一生懸命動かす。


「なんで…っ消えない…の」


でも、消えてはくれなかった。


「…っ…好き…グスッ…先生…っ」


「碧?」


突然声を掛けられ、ビクッと肩を揺らしてしまう。


振り返ると、後ろの扉の所に圭太が立っていた。


こう言う時、なんで先生じゃなくて圭太なんだろう。


昔から私が悲しんでいる時には、絶対圭太が来てくれた。


今は、それが悲しい。


なんだか、先生とは絶対に結ばれない運命だって言われてるみたいで。


「どうしたんだよ…?」


私は涙を拭き、昨日と同じように無理やり笑顔を作った。


「っ…お腹空いたね!お弁当〜♪」


わざと明るく振る舞う私に、何も言わずに近づいて来る。


そして、しばらく黙り込む。


「なに…?」


私が口を開くと、圭太は私を抱きしめた。


「ちょ…っ何?離して。」


そう言っても、圭太が離してくれる気配はない。


むしろ、腕の力が強くなった気がした。


「けい、た…?」


「……」


「離してってば…っ!」


私は、ドンッと勢い良く突き放した。


「…こんな事されても嬉しくなんだけど!」


「……」


「圭太、昨日から変だよ!?」


「……告白すればいいじゃん。」


「え?」


「浜田に告って、フラれれば、それですっきりするじゃねーか!」


「そんな事できるワケないでしょ!?」


「何でだよ!」


「紗那も先生の事が好きだからよ!」


「……は…?」


「私にとって、紗那は1番大切な親友なの!」


「……」


「裏切れるワケ、ないよ…っ」
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