青い花束
第五章
季節は流れ、10月上旬。
まだほんのりと残暑が残るものの、肌寒い季節になって来た。
そんな中、私達3年生はすっかり受験モード。
……の、はずなんだけど。
「はい!おれ劇やりたい!」
「はあ?絶対喫茶店でしょ!」
「お化け屋敷は外せないって!」
「たこ焼き食いてぇ…」
松坂学園は、文化祭一色だ。
只今LTの時間。皆で出し物を決めている所です。
体育祭が終わったら受験に専念させる…とか言ってたのに、こんな事やってていいの?
まあ、そう言う私もテンション上がってますが。
「はい、しーずーかーに!色んな意見があるので、多数決を取ります!」
教卓の前では、委員長が声を張り上げている。
このクラスうるさいから…委員長も大変だなー。
なんて事を考えていたら、前の席の紗那がクルっとこちらを向いた。
「あーちゃんは何にする?」
「んー…やっぱり無難に喫茶店かな?お化け屋敷もいいよね!」
「クスクス…ノリノリだねえ。」
「こう言うのは、楽しまなきゃ損だもん!」
高校生活最後の文化祭だしね!
「じゃあ全員伏せて。劇がいいと思う人…」
私は喫茶店に手を上げる。
1回でいいからやってみたかったんだよね♪
「はい、顔上げていいよー。多数決の結果…」
多数決が終わり、皆が委員長の次の言葉を待つ。
真剣すぎて、息を呑む音まで聞こえてきそう。
「…喫茶店に決まりました!」
「「「「よっしゃあー!!」」」
喫茶店に手を上げたらしき人達が喜びの声を上げる。
私も小さくガッツポーズ。
他の人達は不満そうだけど。
「は?!劇に手上げてるのおれだけじゃん!」
「お化け屋敷の方が絶対楽しいって!」
「クレープも食いてぇ…」
「てか、何の喫茶店やるのよ?」
確かに、喫茶店と言っても色々種類があるよね。
マンガとかでは、メイド喫茶とか執事喫茶をやってるけど…
「それも今から決めるの。文句言わない!」
一気にクラスが静まり返る。委員長強し。
「執事喫茶はー?」
「このクラス、特にイケメンな人とかいなくない?」
「「「「「(ひでえ…by男子一同)」」」」」
「ゆいちゃんがいるじゃん!」
誰かのその一言で、教室の隅で見ていた先生に視線が集まる。
女子達は、キラキラした目で先生を見つめる。
そんな中、紗那が私にコソッと言った。
「先生の執事とか、絶対かっこいいよね。」
私は苦笑いで「そうだね」と返す。