青い花束
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「あーちゃん痴漢にあったって本当!?」
遅刻ギリギリで教室に行くと、松坂紗那(マツザカ サナ)が声をかけてきた。
紗那とは中学校で知り合い、誰にでも分け隔てなく優しい自慢の親友。
「おはよう、紗那。なんで知ってるの?」
「朝、電車で見たって言ってる子がいるの!大丈夫なの!?」
紗那は私の肩を掴んでガクガクと揺らす。
「大丈夫だよ?助けてもらったし。」
「もっと気を付けなきゃダメだよ!あーちゃん可愛いんだから〜…」
紗那は意外にも気にしてない様子の私にタジタジだ。
「紗那の可愛いはアテにならないもん。」
なんて少し意地悪を言うと、「そんなあ〜」と泣きそうになっていた。
私なんかより、紗那の方がずーっと可愛い。
肌が白くて、目が大きくて、黒髪が似合って、大人しくて、優しくて…
いい所を上げ出したらキリがない。
密かに紗那の事が好きな男子も多いんだよね。
私の一番大切な友達。
「圭太くんが助けてくれたの?」
チラリと、私の隣に立つ圭太を見る。
「そんな訳ないじゃん!圭太のやつ、気付いてすらくれなかったもん。」
「ごめんって!これからは電車の中で手繋いでやるよ!」
なんでそんな考えになるのか…こいつは本当にバカだと思う。
生まれた時から一緒だと言っても過言ではないくらいの幼なじみ、圭太。
バカでアホで脳天気で…いい所はほんのちょっとだけカッコイイ顔くらいかな。
「本当にバカでしょ。圭太と手繋ぐなんて死んでもイヤ!」
「なんでそんな事言うんだよ!」
私達はいつもこんな風にケンカしている。
そんな光景を、紗那はクスクスと笑って見ていた。
「2人はいつも仲良しだね〜。」
「「仲良くなんてない!」」
「クスクス。ほら、始業式はじまるよ?」
私と圭太の睨み合いは、その言葉でお開きとなった。