どう愛し合おうが自由でしょ?
No.1『マフィアのカポの一人娘』
イタリア 某所
ここにはリベルタルーチェ、通称リルというマフィアの本拠地がある。
リルはイタリアでも1、2位を争う大きなマフィアだ。
私はそのリルのカポ、ルーカス・コルヴォの一人娘だ。
幼い頃に拾われたので義理の父だが、カポとしても、父としても尊敬している。
その父が今、何故かソファーに座っている私の隣に腰かけていた。
「カポ、何故隣に座るんですか。向かいのソファーに座ってください」
「ノア、酷いじゃないか…。親子が隣り合って座るのは普通のことだ。それに、俺のことは、パパと呼んでくれと言ってるだろう」
絶対に呼びたくない…。
「今は仕事中です。カポとして、しっかりしてください」
「カポとしては、しっかりしている。パパとしての勤めをしているだけだよ」
にっこりという義父さんは、カポには見えない。
私は少しため息をついて、立ち上がった。
座ったままの義父さんを見据えて言う。
「公私混同する人は、嫌いです」
向かいの席に座ると、義父さんが膝を抱えすすり泣いていた。
「ノアが反抗期だ…」
「大の大人が膝を抱えないでください。可愛くありませんよ」
「じゃあ、カポの俺は格好良い?」
あ、面倒くさいのが始まった……。
「真面目に働いている俺が好き?」
部下たちがいなくて良かった。
こんなカポ、見せられたもんじゃない。
「真面目に働いて、公私混同しないカポは好きです」
義父さんは頬を緩ませて、嬉しそうに微笑んだ。
「そっか。じゃあ、頑張る」
抱えていた膝を下ろし、カポの顔つきになる。
「ノアに頼みがある」
「頼み?」
「今日のカルトスミアーナとの取引をノアに任せたい」
「カルトスミアーナ!?」