どう愛し合おうが自由でしょ?
No.1『マフィアのカポの一人娘』

イタリア 某所

ここにはリベルタルーチェ、通称リルというマフィアの本拠地がある。


リルはイタリアでも1、2位を争う大きなマフィアだ。


私はそのリルのカポ、ルーカス・コルヴォの一人娘だ。


幼い頃に拾われたので義理の父だが、カポとしても、父としても尊敬している。


その父が今、何故かソファーに座っている私の隣に腰かけていた。


「カポ、何故隣に座るんですか。向かいのソファーに座ってください」


「ノア、酷いじゃないか…。親子が隣り合って座るのは普通のことだ。それに、俺のことは、パパと呼んでくれと言ってるだろう」


絶対に呼びたくない…。


「今は仕事中です。カポとして、しっかりしてください」


「カポとしては、しっかりしている。パパとしての勤めをしているだけだよ」


にっこりという義父さんは、カポには見えない。


私は少しため息をついて、立ち上がった。


座ったままの義父さんを見据えて言う。


「公私混同する人は、嫌いです」


向かいの席に座ると、義父さんが膝を抱えすすり泣いていた。


「ノアが反抗期だ…」


「大の大人が膝を抱えないでください。可愛くありませんよ」


「じゃあ、カポの俺は格好良い?」


あ、面倒くさいのが始まった……。


「真面目に働いている俺が好き?」


部下たちがいなくて良かった。


こんなカポ、見せられたもんじゃない。


「真面目に働いて、公私混同しないカポは好きです」


義父さんは頬を緩ませて、嬉しそうに微笑んだ。


「そっか。じゃあ、頑張る」


抱えていた膝を下ろし、カポの顔つきになる。


「ノアに頼みがある」


「頼み?」



「今日のカルトスミアーナとの取引をノアに任せたい」



「カルトスミアーナ!?」


< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop