どう愛し合おうが自由でしょ?
カルトスミアーナ、通称カルは、リルに並ぶ大きなマフィアだ。
薬物などには一切手を出さないリルに比べ、カルは薬物はもちろん、人身売買もやっている。
そんなリルと取引なんて、あり得なかった。
「取引って、何のですか?」
「取引というか、承認試験的なものだな。俺の親父の代から、カポが代わるときは互いの承認が必要になったんだ」
互いの牽制か、それとも実は仲良かったのか。
よくは分からないが、今のところ抗戦にはならなさそうだ。
「なんで私なんですか。普通、カポが決めるのでは…?」
「いや、相手のカポが代わるんじゃないだ」
「え…」
「代わるのはリルの方だよ」
「き、聞いてません!……一体、誰が…」
「ノアだよ。次のカポはお前だ」
「は?」
こういうのが、義父さんの唯一嫌いなところだ。
相談もなしに、勝手に決める。
「先に言っておくが、これは決定事項だ」
「嫌です。私がカポなんて……」
人をまとめる力なんてない。
どちらかというと、人は嫌いな方。
コミュニケーションも苦手で、未だに部下とろくに話したことがない。
なのに、いきなりカポだなんて……。
「幹部の方々は何と仰ってるんですか」
普通は幹部になってから、カポになるものだ。
義父さんも、義祖父さんもそうだった。
なのに、幹部になってない私がなるなんて。
「幹部の奴らが推薦したんだ」
「嘘…」
「嘘だと思うなら、聞いてみろ」
「私は……」
湿ってきた拳を握りしめ、ゆっくり立ち上がる。
「考えさせてください」
「あぁ、もちろんだ」
義父さんの顔を見ないように、部屋を出ていった。