【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
「アオイ様どうぞ」
手先の器用なアレスが彩り鮮やかな花冠をアオイの頭にそっと置いて笑みを見せる。
「わぁっ! あいがと」
まんまるな瞳が嬉しそうに弧を描き、手を伸ばしてそっと触れた花冠の感触にアオイの顔は優しく綻んでいく。
「よくお似合いですよ。ブレスレットもお作りしますね」
頬を撫でる風が一面に広がる花々の欠片を舞い上がらせ、膝を合わせるように座っているふたりの視線がしばしそれらを追って……やがて手元に戻ってくる。
「アオイ姫様! お、俺、指輪作りましたっ!」
「カイ」
名を呼ばれたアオイが振り返る。
どこまで行っていたのだろう? 息を切らせながら駆けてきた少年の手には大小様々な花で指輪を模した小さな花輪が握られていた。
「かぁいいっ」
所々飛び出している不格好な指輪にもアオイは瞳を輝かせて笑顔を見せてくれる。
「駄目だよカイ。これじゃ大きすぎてブレスレットだよ」
「……お、大きくたって俺のは指輪だぜ! 本物を贈るのはもう少し大人になってからだけどっ……アオイ姫様、受け取ってくださいますか?」
「うんっ」
少年の真意などアオイにわかるはずがない。
アオイの快い返事に頬を染めて喜んだカイは、剣士らしく片膝をついてアオイの左手を取ると、慈しみを込めて大きな指輪をアオイの薬指へ通そうと近づけた。
「……カイ! 冗談でもダメだよ! キュリオ様に怒られるよ!?」
おままごとの延長かと一部始終を眺めていたアレスが、ぎょっとした様子でアオイの左手薬指を護ろうと手の平で遮る。
「な、なにすんだよ! キュリオ様にはいずれお許しをもらうからいいだろ!?」
手の平でその動作を遮ったアレスにカイが噛みつくように迫るが、あまりにも軽率な考えをもつ彼に今度はアレスが噛みつく。
「キュリオ様が御許しになるわけないだろっ!! そんなことしてみろ! 君はここに居られなくなるのが目に見えてるよ!」
「…………」
言い合うふたりを不思議そうに見つめていたアオイはおもむろに手を伸ばすと――
「カイ、あいがと」
彼が自分のために作ってくれたことをちゃんと理解しているアオイは、カイが手にしている大きめの指輪を手にかけると満面の笑みを浮かべた。
「……アオイ姫様っ……」
しかし、カイの感動も去ることながらアオイが身につけたのは左手首だった。
「まあ……誰が見てもそうなるよ。君のは大きすぎだから」
落胆するカイの肩へポンと手を置いて慰めながら、内心安堵するアレス。
(いまはまだ笑って見過ごされることもあるかもしれない。……だけどカイがこの先、同じ想いを抱き続けたら……)
眉根を寄せたアレスは、カイの想いがこれ以上大きくならないことを祈るしかない。
(アオイ様がキュリオ様の娘である限り、私たちはアオイ様を愛してはいけない)
正直アレスとて、この愛らしい姫君へ今度どのような想いを抱くか見当もつかない。
今はまだ圧倒的に理性が勝っているが、素直で愛らしいアオイを目の当たりにして恋をしないとは断言できないのだ。
「……そんな葛藤も君には存在していないのかもしれないけど」
早速新しい花輪を作り始めている能天気なカイを横目に見ながらアレスは呟いた。
「姫様、次こそ指輪です!」
「……だからダメだって……」
手先の器用なアレスが彩り鮮やかな花冠をアオイの頭にそっと置いて笑みを見せる。
「わぁっ! あいがと」
まんまるな瞳が嬉しそうに弧を描き、手を伸ばしてそっと触れた花冠の感触にアオイの顔は優しく綻んでいく。
「よくお似合いですよ。ブレスレットもお作りしますね」
頬を撫でる風が一面に広がる花々の欠片を舞い上がらせ、膝を合わせるように座っているふたりの視線がしばしそれらを追って……やがて手元に戻ってくる。
「アオイ姫様! お、俺、指輪作りましたっ!」
「カイ」
名を呼ばれたアオイが振り返る。
どこまで行っていたのだろう? 息を切らせながら駆けてきた少年の手には大小様々な花で指輪を模した小さな花輪が握られていた。
「かぁいいっ」
所々飛び出している不格好な指輪にもアオイは瞳を輝かせて笑顔を見せてくれる。
「駄目だよカイ。これじゃ大きすぎてブレスレットだよ」
「……お、大きくたって俺のは指輪だぜ! 本物を贈るのはもう少し大人になってからだけどっ……アオイ姫様、受け取ってくださいますか?」
「うんっ」
少年の真意などアオイにわかるはずがない。
アオイの快い返事に頬を染めて喜んだカイは、剣士らしく片膝をついてアオイの左手を取ると、慈しみを込めて大きな指輪をアオイの薬指へ通そうと近づけた。
「……カイ! 冗談でもダメだよ! キュリオ様に怒られるよ!?」
おままごとの延長かと一部始終を眺めていたアレスが、ぎょっとした様子でアオイの左手薬指を護ろうと手の平で遮る。
「な、なにすんだよ! キュリオ様にはいずれお許しをもらうからいいだろ!?」
手の平でその動作を遮ったアレスにカイが噛みつくように迫るが、あまりにも軽率な考えをもつ彼に今度はアレスが噛みつく。
「キュリオ様が御許しになるわけないだろっ!! そんなことしてみろ! 君はここに居られなくなるのが目に見えてるよ!」
「…………」
言い合うふたりを不思議そうに見つめていたアオイはおもむろに手を伸ばすと――
「カイ、あいがと」
彼が自分のために作ってくれたことをちゃんと理解しているアオイは、カイが手にしている大きめの指輪を手にかけると満面の笑みを浮かべた。
「……アオイ姫様っ……」
しかし、カイの感動も去ることながらアオイが身につけたのは左手首だった。
「まあ……誰が見てもそうなるよ。君のは大きすぎだから」
落胆するカイの肩へポンと手を置いて慰めながら、内心安堵するアレス。
(いまはまだ笑って見過ごされることもあるかもしれない。……だけどカイがこの先、同じ想いを抱き続けたら……)
眉根を寄せたアレスは、カイの想いがこれ以上大きくならないことを祈るしかない。
(アオイ様がキュリオ様の娘である限り、私たちはアオイ様を愛してはいけない)
正直アレスとて、この愛らしい姫君へ今度どのような想いを抱くか見当もつかない。
今はまだ圧倒的に理性が勝っているが、素直で愛らしいアオイを目の当たりにして恋をしないとは断言できないのだ。
「……そんな葛藤も君には存在していないのかもしれないけど」
早速新しい花輪を作り始めている能天気なカイを横目に見ながらアレスは呟いた。
「姫様、次こそ指輪です!」
「……だからダメだって……」