【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
 まさか一晩でここまでの収穫があるとは思わなかった青年の案内された部屋の傍では、なにやら身なりのよい男らが小声で話している。

『水守りの副当主とやらは恐れるに足りないが……あの従者と名乗った青年、水の女神の化身という噂はあながち間違いではなさそうだ』

『なにを怯えておられる? いざとなったら……水守り殿が奇病にかかってしまったと片づけてしまえばいいではないか』

『――しかしあの美しさを葬ってしまうのは口惜しい。美なるものの価値は穢れてこそ、その真価を発揮するというものだ――』



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