【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

ショートストーリー <初代王>を名乗る彼の…笑えない話。

タイトル:<初代王>を名乗る彼の…笑えない話。


出演:<初代王>、キュリオ




"君はずっと神の意志を知りたかったのだろう?"

「随分前から私を知っているような御言葉ですね」

"言っただろ。私はずっとここから見ていたんだよ。君のことも、その前の王のことも――"

「……っ! セシエル様を御存知なのですか!?」

 形のよい眉をピクリと動かして話に食いついてきたキュリオに光の塊のような彼は少し驚いたようだ。

"彼もここに来たよ"

「いつのことです!?」

"ざっと千年前かな?"

 指折り数えた彼は、まるで十日前とばかりに飄々と答えた。

「…………」

(退位したあとの話ではないのだな……。セシエル様の足取りが掴めるかと思ったが……)

 期待した答えではなかったことにあからさまに肩を落とすキュリオ。
 その様子を見つめていた彼は愉快そうに口を開いた。

"この場所を探し当てた王は君を含めて……三人か。何故私が思念体を保っていられると思う? 時折訪れた王にほんの少し力を頂いていたからなのさ"

「なるほど……」

(しかし……セシエル様と私が訪れる前の王はいつの時代の者だ? 数万年もの間、思念体を保つだけの力を与えられる王など千年王以外有り得ない)

"もちろん力の節約はしているつもりだよ。
この姿は誰にでも見せていたわけではないのさ。セシエル王の時は私は姿を見せなかったからね"

「何故です? あの御方ほど聡明な王は……」

"彼はひとりでやってきたよ。ある日突然ね。
そしたらさぁ……あの王ってば見えないはずの私の胸を神剣でグサーッてしてきたわけ!! 狂王の素質が凄いったらありゃしないっっ!"

「……貴方のその口調は昔からなのですか?」

"違うよー。ずっとこの国を見てきたからね。民の口調が移っちゃったんだよねぇ"

「貴方は千里眼を御持ちなのですか?」

"まぁ百里眼? くらいかな。君の寝室までは見えているよ。可愛い子と眠っているね? 今日は一緒じゃないのかい?"




「……それは覗きというのでは?」




 警戒心を剥き出しにしたキュリオに<初代王>を名乗る彼は否定せず、"はははっ!"と笑うだけだった――。

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