†皇帝-emperor-†《Ⅰ》
——プルル
琥珀からだった。
「…あ、はいはい。琥珀?」
『ん…着いた。入口付近に車回した』
「おぉ、サンキューな?琥珀」
『ああ、早く来い』
「ああ~…了解」
そこで通話を終えた。
俺は再び注意を通話から彼女に移す。
さてと、なんて言って意気込んでみる。俺は彼女をそっと起こさないように抱き上げた。
そのまま、琥珀の待つ車の方へ歩き始める。
抱き上げた時に、思ったのは余りにも軽すぎるから本当に彼女を抱いているのか心配になった。
それでも、腕の中にいる彼女の寝顔は綺麗だった。
女の子を見て、綺麗だと思ったのはいつ以来だろう。きっと、覚えいないのは綺麗だと感じた子の顔なんて見ていなかったからだろう——。
彼女の顔が綺麗だからだろうか。この子は何故か庇護欲に駆られる。俺が守らなきゃっていう衝動に。
女の子を見て、守ってあげたいって思うのは初めての感情かもしれない。
何て――今日は本当に自分はどうかしてしまったみたいだ。
そういえば前に誰かが言っていた気がする。
満月の日は精神状態が不安定で正常じゃないらしい。
俺もそうなんだろうか?
俺の真上には大きく丸い月が浮かんでいた。
きっと満月のせいだと思う事にする。何故ならこれから起こるのは全ていつもと同じく一夜で終わってしまうものなのだから。