†皇帝-emperor-†《Ⅰ》
——……月明かりのみの闇の中、俺は壁にもたれ掛かりいつもの様に空を見上げていた。
月の存在を消して。
あと十数分で、一日の終わりを告げるという所で突然、
——ブルッブルッ
無機質な振動音が響いた。
ディスプレイには……”鹿月右京”と表示されていた。
俺は、携帯を手に一時空から視線を移した。
『…はい』
「あ…琥珀?俺だけど」
知ってる。
『…分かってる。何があった?』
「あぁ、実は今。猫拾ったんだけど…迎えに来てくンね?」
こいつまだ、”例のアレ”を続けてるのか。
『分かった。…場所は?』
右京から、場所を聞いた俺はそのまま別の携帯から皇帝のメンツにメールを打ち車を寄越すように指示を出し、
「んじゃ、頼んだぞ?」
という右京の言葉を最後に通話を終えた。