†皇帝-emperor-†《Ⅰ》



女の言葉は誰に向けたモノかは分らない。


それでも、今こいつを独りにしたくなかった。俺に向けられた言葉でもないのに俺は女との間合いを詰めてベッドを背に床に腰を下ろした。


どうして自分が会ったばかりのそれも意識すらない相手に従順になってるのかは分らない。だけど、多分俺は、……こいつに自分を重ねているんだ。


しばらく、じっと肩越しに女の様子を窺う形でじっとしていた。


女がさっきまでの規則正しい吐息の代わりに始めたのは、


——ギリッ ガチッ


歯ぎしりだった。


そして、終いには、



「…ぃ、ゃ……」



うなされ始めた。


俺は、ベッドの上でうなされながら歯ぎしりする女にどうにかさっきまでの甘い吐息を漏らすほどの安らぎを与えたくなった。


俺を突き動かすのが何かなんて考える余裕も今の俺には無かった。


次に、女が何を言うのか俺は耳を凝らしながら女の手を握った。


前に何かで、歯ぎしりには手を握ると良いと聞いたことがある。


にしてもこの情報…合ってんのか?あんまり、当てになんねぇのかもしれねぇが。何もしないよりマシだと判断した結果だった。


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