†皇帝-emperor-†《Ⅰ》
——…二人は私を引き取ってから亡くなるまでに、私が一人でも生きていけるようにとどうやら貯金をしていたらしい。
美和子さんは私専用の通帳に毎月、少しずつお金を振り込んでいてくれていた。
あんな事になるまで知らなかった。
使うこともないのに毎月、お小遣いを私に与えてくれた武爾さんは遺書らしきものに遺産相続人に私をと、綴っていたとか。
どこまでも私は二人に守られていた。
自分たちの事を本当の両親だと思ってくれて良いと言ってくれた武爾さん。
”お父さん”って一度もそう呼べなかった。
美和子さんの事だって”お母さん”だなんて呼んだ事がなかった。
私は二人に与えてもらうばかりで、”親孝行”をすることが出来なかった。
後悔しても、もう遅いんだと分かっていても諦めきれない自分が居る。
美和子さん、武爾さん。
私は、貴方達にとってどんな”娘”でしたか?