†皇帝-emperor-†《Ⅰ》
それから二ヵ月後、私は2人と過ごした日々をことごとく主張していた家から引っ越した。
今の私には耐え切れなかった。大好きな2人と過ごし思い出で溢れたあの空間が静寂に包まれていくのが。
まるで、2人はもう居ないと私に追い討ちをかけているかのように思えてならなかったから。
引っ越した先で、新しい生活をスタートして少しでも早く大人になりたかった。
2人からの”贈り物”は一時”借りる”ことにした。もちろん、働き口が出来たら返すつもりだ。
そのお金で2人のお墓をと考えていた。
2人には本当のお子さんがいなかった。
きっと、だから私を本当の子供のように育ててくれたんだと思う。
美和子さん、武爾さん。
私は前に進みたい。あなた達のためにも。
初めは会ったことも、見たこともない”両親”を心の支えに。
それからは自分だけを信じて、泣かないと決意と意地だけで頑張った。
でも今は、2人のために前に進みたいの。
どうか、そこで見ててください。
( ……私、頑張るから。)
今度は強がりなんかではなく今の私が出来る2人への唯一の親孝行。