†皇帝-emperor-†《Ⅰ》
皇帝総長 松雪琥珀side
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——…右手には薬の入った袋を、左手にはミネラルウォーターを持ちそっと寝室に入る。
ベッドの上で小さな山を作っているのは息苦しそうに短い呼吸を繰り返す女の姿だった。
すぐにベッドの枕元に近づいた俺は、
『…起きれるか?』
と問いながら女の頭の下に腕を通し上半身だけを起こした。
女は熱が相当高いのか、顔は赤らみ目はトロンと潤んでいた。
『…薬、持ってきたけど飲めるか?』
女は意識が朦朧とする中、一度瞳を閉じ
「……ぃ、ゃ……ぃゃ」
と首を横に振りながら薬を拒否した。
( ……正直、焦った。)
どうするか、と迷った末に飲まねぇー訳にもいかないしな。
と思いながら類から受け取った薬の入った袋を漁ってみると、
(……さすが医者の息子。……いや、類。)
そこそこ大きさのある袋の中には、薬以外にも熱さまシートや体温計、救急用の小型氷枕などが入っていた。
内がダメなら、外からいってみるか。
というのが俺の出した結論だった。