†皇帝-emperor-†《Ⅰ》
私はベッドからそっと降りた。
そして、ベッドを背にして、床に腰を下ろし眠っている彼の目の前にしゃがみこんだ。
(……起こすべき?)
色々とお世話になったみたいだし、お礼位言うべきだよね。
そこで、そっと彼の肩に手を置き軽く揺すってみた。
しっかりと閉じられた瞼は持ち上がる気配はなさそうだった。
さて、どうする!?
もう少し強く揺すってみようかな。
彼の肩に手を置こうとした時だった。
「……!!」
さっきまで、閉じていたはずの瞼は持ち上がっていて私の目は漆黒の瞳をうつしていた。
漆黒の瞳がふいに優しい色を灯したかと思うと、彼は優しいほほ笑みを私に向けながら、
『…調子はどうだ?』
と、寝起きのせいか少しかすれた声を出した。
えっと、いつから起きてたんだろう?と疑問を抱きながらも
「…大丈夫だと思う」
と答えた。