†皇帝-emperor-†《Ⅰ》
ーーノックの音が廊下に響く。
「……入れ」
『…‥はい』
いつかの金色の龍を両脇に従えた扉をくぐり俺は祖父の待つ”双龍の間”と呼ばれるらしい部屋へと足を踏み入れた。
部屋の中は5年前と何一つ変わっていなかった。
そして、それは部屋の主も同じようだった。
俺の姿を捉えた蒼い眼を持つ彼は。
「ほぅ……すっかり、大きくなったな?」
と言葉を降らした。
『……お陰様で』
という俺の言葉を聞き盛大に笑い出したかと思うと急に、
「どうして、ここに呼ばれたか分かるか?」
と真剣な顔を作った。
俺は、
『……母のことですか?』
俺に話なんて母のこと以外ないだろうに、
「フム……中々、賢いの~」
と呟き、彼は悲しみを瞳に灯しながら
「……琥珀」
俺の名を呼んだ。