†皇帝-emperor-†《Ⅰ》
「そなた、母は好きか?」
と唐突に投げられた問い。
何故、そんなことを聞くんだろうか。
俺は、あの人が苦手だった。
あの人から受けた傷はきっと、この先ずっと消えない。
だが今は、
『……俺は、その問いに対する答えを持ち合わせていません』
俺の中のあの人の記憶は、”日課のように俺を殴る姿”と”5年前に初めて見たあの人の泣いている姿”のまま止まっている。
好きかと問われても困る。
それでも、
『……ですが、俺にとってはたった一人の母親です。必要な存在ではあります』
俺の返答に、
「……そうか。そなたは優しい子じゃな」
と呟いた。