FEEL《中》
薙は苦笑するとギャラリーに紛れた。

俺もう組手したくないんだけど。
疲れたよ。言い出しといて悪いけど。



『ごめん。トイレ行ってくるわ。』



取り敢えずこの場から逃げるためにトイレに行くことを考えた。
近くにいた下の奴らに一言言うとその場から離れた。



ーーーーーーーーーー




ーーーーーー



トイレと向かう途中、微かに誰かの声が聞こえた。



「…………ん…よ。」


「…。」



声からして2人。
聞き覚えがある。

盗み聞きは趣味じゃないんだけど…、と思いながら声に耳を集中させた。



「…なんで言わへんの?」


「このままでいい。」


「お前がそう思てるだけとちゃうの?」


「お前にはそう見えるか?」


「あぁ、見えるね。」



綺羅さんと歩の会話だった。



「喜ぶと思うで。泣いてたやんか。
なんで言わへんの?………、


「お前には関係ない。このままでいいんだ。まだ分からない部分は多い。

…この話は終わりだ。」



俺は慌てて物陰に隠れた。
足音が自分の横を過ぎていくのが分かった。


あっぶな。
もう少しでバレるところだった。
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