FEEL《中》
…、残念ながら綺羅さんには表情の変化は見られなかった。


だけど…、「うまいな。」とだけ言い、むぅの頭を撫でた。


いやいやそれは俺のオススメなんだけどっ!本来、頭を撫でられるのは俺じゃないんですかっ!?



「あっれぇ?野良チャン、嫉妬?」


『歩、喋らないでください。俺、今イライラしてるんで。』


「もぅ、つまんなぁーい。」


『気持ち悪い声出さないでください。』


「なぁ、それ絶対目上に対する態度ちゃうやろ。」



歩が冷めた目で見つめてくるが気にならない。



「おい、歩。野良の揶揄いはそこまでにしとけ。」


「はいはいはーい。」



綺羅さんの言葉に歩は軽く返すと乍羽と話し始めた。



「野良くん、ちょっとだけいい?」



気がつくと目の前にむぅがいた。



『…いいけど。』



俺のその言葉にむぅは顔を輝かせると、腕を引っ張り強引に部屋の外へ連れ出した。

……扉が閉まる直前に見えた、綺羅さんの顔は見なかったことにする。
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