FEEL《中》
「安心してね、大丈夫。」



むぅは力強く手を握ってきた。



『いやいやいやいや、違うから。』


「え?」


『俺、チームで一番女遊び激しいから。』


「え゛。」



困惑した顔から引いた顔になる。
おいおい、そこまで引かないでよ。



「じゃあ…、」


『俺は女の子が好きだよ。』


「そう、なんだ…。」


『だから綺羅さんが好きなのは構わない。』



恋愛感情じゃない感情は少し複雑な気もするけどね。



「あっ!うん。…内緒に、してね。」


『わかったよ。』



今度はどんどん顔が赤くなっていく。



『ふっ。』


「え、なななにっ!」


『ははっ。いや、ごめん。表情がころころ変わるなって思ってさ。』



そう言うと、むぅから表情が消えた。



『…どうした?』



すると我にかえった顔をして俺を見るがどこか焦点が合っていない。



「ぇ……ぁ、」


『おい。』


「ッ…ごめんなさい。なんだか懐かしくて。」


『はい?』


「昔、誰かに同じことを言われた気がするの。」


『そうなんだ。』



女の過去に踏み込んでいいことなんかあったことないし。とりあえず深くは入らないように気をつけながら頷く。



「誰に言われたんだろう。」


『さぁね。』



俺はそう言うと一度むぅを見てから部屋へと戻る道を歩く。

話はあれだけっぽいし大丈夫でしょ。
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