FEEL《中》
ふと顔を上げると、目の前の男——柚子(ユズ)は眉根を寄せている。

あれは柚子の疑ってる顔…。

ん?
疑われないようにしたつもりなんだけど、なんであの表情に?

冷や汗が吹き出た気が……した。



「サチには会えたんだね、それで?」


『ななななななんのことっ!』



ガタンッと立ち上がったから、膝を机にぶつけて悶える。少し涙目になった状態で柚子を見た。



「はぁ…お前ほど分かりやすい奴はまだ見たことない。」



柚子は優雅に足を組み直した。



『ちょちょちょ!俺会えなかったって言ったよね!?』



言わなかったっけ!?



「まだ言ってるの?会ったことは分かったから、隠してる理由を言いなよ。」



なんで分かったの。
なんでこんなことになってるの。

嗚呼…この後俺はどうなるのか。
想像したことを後悔した。



『う゛ぐ。それは無理だ。』


「…会ったことを認めたね。じゃあなんで言えないの?」


『俺はまだ死にたくないですっ!』


「はぁ…分かったよ。じゃあ俺がサチの所へ行く。場所を教えて。」



盛大な溜息を吐かれると逆に申し訳なくなるのはなんで?

そして感じる、俺と柚子の温度の差。



『俺は平凡な一生を送りたいんだっ!まだ死にたくないっ!

…あれ?サチの所まで行ってくれるの?ありがとうっ!』



思わず涙目になると柚子は顔をしかめた。



「煩い。早く言え。」


『…サチの家の近くの総合病院。』


「了解。」



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