FEEL《中》
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「げぇ。」


『すみません。遅れました。』



目の前には弥生さん。



「え?君も乗るの?走って来れば?」


『今から走ったら間に合わないです。』


「大丈夫だよ。お前、体力〝は〟ある。」



あえて〝は〟を強調して微笑みながら見つめてくる。

なんで俺は嫌われているんだろう。



「弥生そこまでにしろ。悠生乗れ。サチの機嫌が悪くなる。」



朔弥が少しキレながら弥生を見て言った。



「しょうがないなぁ。じゃあ一言も話さないでね。耳障りってヤツ?」


『…わかりました。』



俺が俯くと弥生さんは少し笑ったように感じた。



ブォン

柚子やサチの車と同じシルバーのフルスモークの車が出発した。



車の助手席に朔弥、後ろに俺と弥生さんが座ったのはいいけど…俺の場所はとても狭い。



というのは、弥生さんが寝転んでいるからだ。



「足が伸ばせなーい。邪魔。」


『でもこれ以上詰めれま…「俺さ、話すなって言ったよね?」



いつもより低い声が車の中に響いた。
俺は思わず口をつぐむ。



「お前は、静かに、俺に、従え。」



それだけ言うと弥生さんは微笑んだ。



「やっぱお前の顔、最高ぉー。」


『…、』


「一気に気分が良くなる。」


『…、』


「チッ。何も言わないんだぁ。」

「弥生、そこまでにしろ。着くから。」



朔弥が口を挟んだことによって弥生さんも話すのを止めた。


2人の纏うオーラが、雰囲気が、変わった。
此処にいるのはいつも口の悪い朔弥じゃなくて。明るい弥生さんじゃなくて。


2人共、皇龍会の幹部の顔つきになる。



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