不機嫌なキスしか知らない



「いい感じそうだもんね、ふたり。
上手くいくんじゃない?」

「そうかな?……ありがとうな、紗和にそう言われると大丈夫な気がしてくる」


「あはは、何それ」



屈託ない笑顔で、白い歯を見せて笑う圭太。その笑顔に胸が苦しくなる。



……そうか、ついに。


いつかこんな日が来ることはずっと前からわかっていたことだけれど、いざそうなってしまうと息が苦しくなる。

圭太の話を聞く限り、菫ちゃんと圭太の恋は順調そうだ。

菫ちゃんとは話したことはないけれど、きっと彼女も圭太のことが好きなんだろう。

傍目から見ていてもそう思うし、圭太の話を聞いてもそう思う。


圭太が告白したら、圭太は菫ちゃんの彼氏になって。

圭太が私の彼氏になる可能性は、本当の本当に0になって。

私の恋は今度こそ終わりになる。
わかってたけど、嫌だなあ。




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